sotto
Sotto
INTERVIEW人を想う
Vol.104
2023-09-05
出る杭
ESSAY想雲夜話
第11夜
2023-08-23
第10夜
2023-07-20
Vol.103
2023-07-10
医師
第9夜
2023-06-20
英語教員を志したのは、これまでに出会った先生たちの影響です。中学校の増子平八郎先生もそのひとりでした。社会科の筆記試験で、教科のテストに加えて口頭試験を行うような先生でした。「好きな政治家の名前を言ってみろ、その理由は?」とか、授業内容に関したいろいろな質問をするのです。昼休みになると新聞からおもしろそうな記事を選んでは、
夏はもはや遠く去りゆき、しかし、その旺盛な精神はいまだここに漂っている。その風情を三島由紀夫は、「夏が老いてゆく」と言った。夏が来て、秋が来て、冬が来て、春が来て、また夏が来て、秋が来て、冬が来て、春が来て。人もおなじく、若者はやがて歳を重ね老人になり、世を去り、そしてまたつぎの若者が歩き出す。老人が若者になることはなく、まぶしいほどの若さが失われて、なお残るものはなんだろう。
夏の雲はどこまでも白く、どこまでも高く。風が吹いて、草をなびかせる音も、蝉が鳴いて、飛び立ったあとの余韻も、世界の音はみんなみんな青い空に上ってゆく。ひとり大地に残されたわたしも目をつぶって舞い上がる。それにしても、夏の盛りはどうしてこんなに静かなのだろう。
興味がわくと深掘りしたくなる性格です。自分が知らないこと、よくわからないと思うものほど学びたくなる。哲学の本が好きなのは、一見何が書いてあるかわからないから。大学生のときに初めてハンナ・アーレントの『人間の条件』を読んだのですが、さっぱりわからなくて10ページで
分厚いカーテンも、障子も、ガラス戸も閉じたまま、夜明け前の光がぼんやりと染み込んでくる部屋で、わたしは畳の上に寝ころんだまま、昨晩君が口にした言葉を頭の中で繰り返している。いまのぼくには、生きる希望がないんですよ――。
2023-06-10
Vol.102
ネイチャーガイド
想いをつなぐ メガネをかけてるのは視力矯正のためではなくて、鳥をすばやく見つけるためなんです。三宅島はバードアイランドとして有名で、シーズンにはたくさんのバードウォッチャーが来島します。日中、人とすれ違うことはあまりないけれど、自然のあるところに行くと、人に会えますよ(笑)。
2023-05-20
第8夜
振り返っても戻れないならば、呼びかけても帰れないならば、振り返らず、呼びかけず、すべて忘れてしまえばいい。けれど、それもまた、許されず。高くかざした手の先にわたしは何を求めているのだろう。 この世は舞台、人はみな役者。 ――『お気に召すまま』シェイクスピア
2023-05-10
Vol.101
新聞記者
敗者の深みと墓碑 ちょうどバブル経済のころに経済部に配属されました。兜町で取材をはじめたのが1987年ですから、NTT株の上場などがあって、株価がどんどんどんどん上がっていく、「大活況相場」と呼ばれていた時代です。そこから後は陰りが見え始め、
2023-04-20
第7夜
鴨長明は、ぢっと河を見つめているうちに、気がついた。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」、と。永遠とも思える河の流れと、その上に浮かんでは消えてゆく泡沫(うたかた)と。大いなる時の流れを思えば思うほどに、人のいのちのはかなさを知る。この世の無常を悟ったと同時にまた、悩みもいっそう深まったにちがいない。一瞬のいのちを、それでも生きていくというのは、いったい何だろうか。
2023-04-10
Vol.100
羽黒山伏
感じることが答えだ ぼくの師匠、星野文紘先達⋆からは、「頭で考えないで、ちゃちゃっと身体で考えろ」と、よくたしなめられました。大人になると他人から怒られることはほとんどありませんが、最初のころはみんなの面前で罵倒されることもしばしばあって……。
2023-03-20
第6夜
「目から遠いと、心から遠い(Loin des yeux, loin du coeur.)」というフランスの格言があって、そうだよなあ、そうだよなあ、と、その言葉の力強さに気圧(お)されて過ごしてきた。でもいずれ、そう、いずれ、どちらが先かはわからないけれど、でもいずれ、愛する人は遠くへ去ってしまう。いのちというのはそういうもので、しかたがないことだ。が、せめて心の中には、いつも近くにいてほしいと願うのもまた、しかたがないことだろう。さて、どうしたものか。
2023-03-10
Vol.99
ドメーヌ・ボー
誰でもいいわけじゃない ここから見える景色、めちゃくちゃいいでしょう? いい景色には、悲しみや苦しみを癒す、すばらしい力がある。その自然の力を、ワインに込めたいのです。 ワイナリーをはじめたのは、
2023-02-20
第5夜
冬と春のちょうどの境目がどこにあるのか、目を凝らして探してみたら、冬至に行き当たった。ここまでが冬ですよ、ここからが春ですよ、と。生きることも、死ぬことも、出会いも別れも、そんなふうにわかりやすく示されていたら、
2023-02-10
Vol.98
デザインディレクター
対象と空間、その先を想う 力のない言葉は消費されると考えています。たとえば、流行語は翌年には使えない言葉になっていることが多いですね。これは言葉に力がないからです。ところが、「おもう」は商業的に消費されたとしても古びません。
2023-01-10
Vol.97
ローズファーマー
植物に合わせて生きる 「人の都合で働くな、植物の都合で働け」。花の師匠だった父から最初に言われたことです。植物に合わせるということは、人間らしい生活ではなくなります。子どもの運動会の準備をしなくちゃいけなくても、植物のことをやってからやれ、と。
2022-11-20
第4夜
不知、生まれ死ぬる人、いづかたより来りて、いづかたへか去る。 ――『方丈記』 わたしがちょうど三十歳になる年の冬に父が亡くなった。すでに母とは離婚していたことや、わたしが父の最期を看取ったことや、長男だったことや、いつでも連絡を取りやすい親族だったことや、そういうさまざまな都合が重なって、父が暮らしていた公営住宅の後始末をすることになった。ひとり住まいには不釣り合いなほど広びろとした、そして、ひとり住まいには不要なほどたくさんのモノにあふれた一室で、雑然と積まれた書類の山を前にして、なにから手をつけたらいいものか呆然と座り込み、思案の末に、未開封の封筒を片端から開けることにした。
2022-10-26
Vol.96
俳優
はじめての舞台とアドリブ 子どものころは祖父母と両親と弟妹の7人暮らし。父は公務員で母は大学の事務職員という、いわゆる、ふつうの家庭で育ちました。演劇の道に進むきっかけは、中学生のときです。学校の行事で『夢屋』という演劇をやることになって、ぼくはジャンケンに負けた。
2022-10-20
第3夜
「おまえ、虚無を見たことがあるかい、ぼうず?」 ミヒャエル・エンデが、『はてしない物語』の中でファンタジー〈物語〉と「虚無」の戦いを描いたのは、目に見えないものへの畏敬の念を取り戻すためだったと思う。それはつまり、目に見えるものだけを信用し、目に見えるものだけに囲まれて生きていると思っているわたしたちが、しだいに目に見えないものを恐れるようになり、その恐れはいつしかありもしない敵を生み出し、やがて世界は虚偽であふれてゆく。それを止めることができるのは、ファンタジーであり、目に見えないものへの畏敬の念だ、と。
2022-10-19
Vol.95
京刺繍 伝統工芸士
いつもだれかが 祖父は京都、祖母は横浜の生まれでね。結婚を認めてもらえず、駆け落ち同然に東京へ行って、それから関東大震災のあとに滋賀の大津に来ました。当時はまだ読み書きができない人も多かったそうで、祖父は家業であった刺繍と読み書き、祖母はお花を教えながら暮らしていました。そうして私の母が刺繍を受け継ぎました。
2022-10-12
Vol.94
徳泉寺 住職
遊ぶように学べ 9歳のとき、京都の東本願寺で得度(出家の儀式)を受けました。「京都旅行に行ける」「ゲームウオッチを買ってあげる」という、父からの甘い誘いに乗ってしまった。得度を受ける前に、東本願寺近辺の床屋さんで頭を丸められましてね、もちろん、お坊さんになる覚悟なんてありませんでした。お坊さんの格好をして、すごく不機嫌そうな私の写真が残っています(笑)。
2022-10-05
Vol.93
グラフィックデザイナー
優等生と退学届(吉岡と小林) 小学生のころは、何も考えずに先生の言うことを聞く、いわゆる優等生でした。社会に対する疑問を持ちはじめたのは高校の同級生の吉岡宏晃と出会ってから。彼の影響で政治とか社会思想の本もいくらか読むようになった。
2022-09-28
Vol.92
大村はま記念国語教育の会 事務局長
9月3日 9月3日は、わたしが大村はまの授業をはじめて受けた日です。人生のなかでエポックがあるとしたら、それは53年前のあの日だろうと思います。大村はまに出会うまでは、教科のなかで国語がいちばん嫌いだった。ここの行間にこんな感情が滲み出ているので……、とか言われると、そんなのどこに書いてあるのだろう?
2022-09-21
Vol.91
文化人類学者・博士研究員
ひとりで決断した特別な日 父はわたしが大学4年生のときに亡くなりました。クリケットやフットボールが大好きで、高校の体育の教師をしていました。体が大きくて、髭を伸ばして、赤い服が好きだったから、クリスマスになると子どもからサンタだ!
2022-09-20
第2夜
不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心 啄木が見上げた空と、いまわたしが見上げている空はおなじ空だろうか。それともちがう空だろうか。はじめてこの歌と出会ったのは中学2年生の国語の教科書だったとおもう。ああ、世の中には自分と同じことをしている人がいるものだと、この歌が映し出す大きな空の景色に、妙に納得したことをおぼえている。
2022-09-14
Vol.90
Deportare Partners代表
人間を演じる 人の気持ちを想像してしまうんです、どうしても。ちょっとでも気になった人のことを想像せずにはいられない。小さいころからの癖ですね。でも、競技者にとって、この癖は大きなデメリットになりかねない。
2022-09-07
Vol.89
信夫山スタジオ
憧れと想像と撮影 福島県福島市で生まれました。子どもの頃から映画が好きで、映画の世界に憧れていました。小学生の頃は面白いことが大事だったので、なんでも試してみたくて、廃墟の団地の窓に石をぶつけて一枚ずつ割ってみたり、悪さばかりしていました。
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