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記事: シンプルに、好きなことを追い続ける。

シンプルに、好きなことを追い続ける。
So Story

シンプルに、好きなことを追い続ける。

父を想うとき

兵庫県に生まれて、大学生の時に一人暮らしをはじめました。家ではよく焼き菓子を作っていました。栄養学を学んではいたけれど、栄養士として働くのはわたしには違うなと思って、趣味だったお菓子づくりの道に進みました。修行させてもらったのは神戸の洋菓子店。パティシエは可愛くて華やかな仕事にみえるかもしれませんが、厳しい世界です。10年間勤めてから独立して、東京に自分のお店を持つことにしました。

東京には家族や友人もいない。頼れる人がほとんどいない環境で開業したので、不安な気持ちが大きかった。開店時間になると、いまでもよく父を想います。父は明るくて、愛想もよくて、知らない人にも平気で声をかけるような人。わたしには安定した仕事に就いてほしかったみたいですが(笑)。仕事をはじめてからは忙しくてなかなか帰れなくて、亡くなる前にもっと会っておきたかったなと思います。

友人たちを想うとき

お店が休みの日は洋服を買いに行くことが多いです。昔からとにかく洋服が大好きで、いいものを長く着たい。インポートブランドの店員さんと仲良くなって、コレクションの季節にはパリやスウェーデンに連れていってもらったこともありました。有名なデザイナーさんやファッション誌の編集者さんにお会いしたり、好きなブランドを見て回ったり。好きなものを追い続けるといろんな出会いがあります。どこで誰に出会うかわからない。それがおもしろいですよね。

お店をオープンするときも友人たちにはお世話になりました。お店に飾っているお花も友人にお願いしていて、いつもすてきなお花を届けてくれます。入口に置いてある丸い寄生木(やどりぎ)はきれいなドライツリーになってくれました。とっても珍しいそうです。レジ横の焼き菓子をのせているお皿も友人のセレクト。ヴィンテージのお皿がお店の雰囲気にぴったり合って気に入っています。友人たちにはたくさん支えられています。

やってみてから、考えたらいい

いつかは大好きなファッションの世界で展示会やイベントのケータリングもできたらと夢を描きながらここまできましたが、お店を始めてからは休みがない日も多く、あっという間に2年が経ちました。「ケーキ屋さん」って可愛いイメージがありますが、わたしは可愛くはしたくなかった。外観も内装もシンプルにこだわりました。ケーキも季節のフルーツを使ったシンプルなものに。お店には近所のおじいちゃんやお子さんたちも来てくれて、みんな優しい。お店をやってみて、あらためて、人に恵まれているなあと思います。

独立するときはもちろん不安な気持ちもありましたが、同じことで悩み続けるのが嫌で、まずはやってみた。やってみてダメなら、そこでまた考えたらいい。子どものころから、父が自由にさせてくれたからこそ、いまこうやって好きなことに挑戦できているのかもしれない。ひとりでお店をやっていくのは大変なことが多い。でもお菓子をつくることが好きだから、わたしはつくり手であり続けたいと思っています。

聞き手=加納沙樹 撮影=平野有希
PROFILE
芦田真理子
芦田真理子あしだ・まりこ

「traiteur pâtisserie Leirion(トレトゥール・パティスリ・レイリオン)」オーナー。見た目や菓子そのものが放つ空気感を大切にした菓子づくりがコンセプト。店舗営業のほか、展示会、ファッションブランドのレセプション、ウエディングなどのケータリングを行う。趣味は洋服と花。 www.patisserie-leirion.com/

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