Sotto

Vol.10

ウエディングプロデューサー

安部トシ子さん

節目があるから、人は強くなれる。

九州から東京へ

大分県で生まれて、長崎の学校に行きましたから、友だちは九州が多いかな。いまでも、お互いに「ちゃん」付けで呼びあってるわね。学校を卒業して、最初は大分のテレビ局に就職して、秘書課に配属されました。同期が何十人もいる時代で、みんな結婚するときには盛大な式を挙げたの。でも、どれもこれも同じような式でね。まるで顔だけが違うみたい……、個性がなくてもったいないなって。でも、当時はそういうものだと思って過ごしていました。

35歳で東京へ。ウェディングドレスを販売する会社に入って、お客様の生の声をたくさん聞きました。そこで見えてきた悩みや課題を解決するために、自分でウエディングのプロデュース会社を立ち上げました。

 

大分の放送局に勤めていた頃(1965年)

 

人生の節目には儀式がある

いまは新型コロナウイルスの影響で結婚式が延期になったり、式自体をできなくなったり、やらなくなったりするカップルもいます。中には、「こんな時代に生まれなければよかった」って、心がくじけてしまう人も。そういうお悩みを聞いて思いついたのが「ヘリ婚」。結婚するふたりがヘリコプターに乗って、東京タワーやレインボーブリッジ上空で愛を誓うの。ヘリのパイロットが誓いの証人です。

私は、披露宴よりも挙式が大事だ、とよく言います。儀式は人生のけじめだから。たとえウェディングドレスを着なくてもいいから、きちんとしたかたちで誓う。人は節目があったほうが生きやすい。そういう性質を持っているのだと思います。

 

オフィース・マリアージュ立ち上げた頃(1983年)

 

たくさんの節があるから強い

節目のない人生って、だれも経験したことがないはず。お宮参り。七五三。入学式。卒業式。成人式。私たちは子どものころから必ず節目を経験してきています。でも多くの式は、自分の意思でやっているわけではなくて、実は自分の意志でできる初めての節目が結婚式なんです。最後のお葬式だって亡くなるときは自分の意思ではないですから。だから結婚式で誓うということは、人生の節目であり、けじめ。そのけじめを自分でつけられなかったら、そのあとの人生強くなれないなって思うの。竹はどんなにしなっても折れない。それはたくさんの節があるから。人生の節目も同じです。

明日の撮影も準備から立ち会います。おばあさんになってる暇がないわね。

 

(聞き手=加納沙樹、撮影=平野有希)

 

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