秋の夜に月を見上げて ― 2025年の十五夜
2025年の十五夜は10月6日。お団子やススキを供えて月を眺める習わしに込められた意味を紹介します。
- 最終更新日
- 2025-09-22

2025年の十五夜、中秋の名月は 10月6日(月) に訪れます。十五夜とは旧暦8月15日の夜を指し、この時期の月は「中秋の名月」と呼ばれてきました。秋は空気が澄んで、月が一年の中でもっとも美しく見える季節。昔から日本人はこの夜を特別なものとして過ごしてきました。
平安時代には、池に舟を浮かべて水面に映る月を眺める「観月の宴」が行われ、月を愛でることが風雅とされていました。その風習はやがて庶民にも広がり、稲の収穫と結びつき、自然の恵みに感謝する行事として定着していきます。十五夜は、月の美しさを楽しむだけでなく、「今年も無事に収穫できました」という思いを捧げる日でもあったのです。

この夜に欠かせないのが、お供えものです。月見団子は丸い形で満ちた月を映し、円満や健康を願う象徴とされてきました。十五個を供える地域もあれば、一年の月に合わせて十二個にするところもあります。供えた団子をのちに家族で食べることは、恵みをいただき、分かち合う意味を持っていました。
ススキを供える習わしもよく知られています。十五夜の頃は稲穂がまだ揃っていないため、稲の代わりとしてススキが立てられました。豊作を願う意味が込められ、また鋭い葉は魔除けになるとも信じられています。供えたススキを軒先に飾る地域もあり、秋の風物詩のひとつとなっています。
地域によっては、里芋や栗などの秋の味覚を供えることもあります。その名残で「芋名月」「栗名月」と呼ばれることもありました。身近な食材を月に捧げることは、暮らしと自然をつなぐ営みそのものだったのでしょう。
月を見上げることには、自然や季節と心を重ねる意味がありました。月の満ち欠けは人の暮らしや命の循環を映すもの。満ちた月は「円満」や「調和」の象徴とされ、また「同じ月を見て遠くの人を思う」心も昔から大切にされてきました。
十五夜は大きな祭りではありません。けれど、お団子やススキを用意して月を眺めるだけで、自然への感謝や大切な人への思いを確かめることができます。今年の10月6日、秋の夜に月を見上げ、静かなひとときを過ごしてみませんか。その時間は、暮らしにそっと寄り添う祈りとなるはずです。




